1. R式ラテンダンス理論の概要
R式ラテンダンス理論は、ウォルターレアード著『The Laird Technique of Latin Dancing』を元に、数々のトップコーチャーから学んだ知識と、私自身の経験からくる見解を加え、社交ダンス(特に競技ダンス)の表現力を高める上で最低限抑えておいた方がいいと思う知識をまとめたものです。
私見も入っているので、これが絶対的に正しいとも言い切れませんし、異論がある方もおられるかと思います。
しかし、まだ自分自身のダンスというものを確立されていない方には、一つの考え方としてお役に立てると思います。
表現力とは
ダンスは身体を使った自己表現であるということは、異論がないでしょう。しかし、誰からも共感されない表現では意味がありません。観ている人たちに共感される表現力が必要となります。
では、共感される表現力とはどのようなものでしょうか?
R式ラテンダンスでは表現力を以下のように捉えています。
表現力=ダンス理論×テクニック×個性
つまり、
- 正しいダンス理論を理解し
- 実際に身体で実践できるためのテクニックを習得し
- その上で自分がもって生まれた個性が合わさること
で、自ずと表現力のあるダンスになるという考えです。
『表現』ということをあえて行う必要はなく、正しい考え方を身につけ、それをこなす技術力を高めていくことが、結果的に観ている人に共感される表現力を磨くことにつながると考えています。
表現力というと、踊り手が元々持ってるセンスで決まってしまうと思われがちですが、練習の仕方しだいで高めていくことが可能です。
ここでは、表現力の三要素のうち「ダンス理論」に焦点を当てて述べていきます。
R式ラテンダンス3原則
競技ダンスには、誰にでもわかる客感的な審査基準というものがありません。スポーツ的であると同時に芸術的な側面を持つダンスである以上、それは仕方のないことです。しかし、私の経験則から言うと、明文化されてはいないけれども、審査員やコーチャーが踊り手を評価する上で、(無意識的に)判断している基準が三つあると感じています。
それは以下の三点です。
- 体重移動(軸移動)によってリズムを表現する
- 体重移動(軸移動)は骨盤の運動によって起こす
- 1と2を男女が調和を取り合いながら行う
この三点を私はR式ラテンダンス3原則と呼んでいます。
私は、この三点を抑えることで、はじめて競技ダンスの評価の土俵に立てると考えています。
この三点を身を持って理解するためには、ラテン5種目の中でも最も基本となるルンバのベーシックステップの構造、ヒップアクションとルンバウォークの関係性を理解することでイメージが掴めてくると思います。
2章からはベーシックルンバを中心に解説していきます。